サクラシー SAKRACY

製品概要・製品情報

サクラシーは、患者さま自身より採取した口腔粘膜組織から単離した口腔粘膜上皮細胞を、ヒト羊膜から調製した羊膜基質上に播種・培養して製造した培養自己口腔粘膜上皮細胞シートです。
角膜上皮幹細胞疲弊症に伴う瞼球癒着や結膜嚢短縮といった眼表面疾患のある患者さまに対して、癒着の解除や瘢痕組織の除去をした後、露出した角膜や強膜上に移植することで、口腔粘膜上皮細胞が生着・上皮化し、眼表面の異常を修復することを目的としています。

商品名

製品名:サクラシー
一般名:ヒト羊膜基質使用ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート
販売名:サクラシー

製造販売元

ひろさきLI株式会社

JANコード

口腔粘膜組織輸送セット:4595124264026
培養自己口腔粘膜上皮細胞シートパッケージ:4595124264019

承認番号

30400FZX00001000

承認年月

2022年1月

保険適用

2022年9月

効能・効果又は性能

角膜上皮幹細胞疲弊症における眼表面の癒着軽減

関連する使用上の注意

  • 本品は角膜上皮幹細胞疲弊症の原因を治療するものではないことから、角膜上皮幹細胞疲弊症の原因となる疾患の管理を行った上で本品を使用すること
  • 臨床試験に組み入れられた患者の背景(癒着の程度等)について、臨床試験の内容を熟知し、本品の有効性及び安全性を十分に理解したうえで、適応患者の選択を行うこと

製品構成と剤型

口腔粘膜組織輸送セット

口腔粘膜組織輸送セット

培養自己口腔粘膜上皮細胞シートパッケージ

培養自己口腔粘膜上皮細胞シートパッケージ

羊膜基質上に重層化された口腔粘膜上皮細胞のHE染色像

羊膜基質上に重層化された口腔粘膜上皮細胞のHE染色像

Nakamura,T et al. Br J Opthalmol 2004 より引用

開発の経緯

治療スキームと移植後の管理

臨床試験成績

開発の経緯

京都府立医科大学眼科学教室 木下茂先生らによって培養自家口腔粘膜上皮シートの研究が行われてきました。2002年より臨床研究が開始され、2008年までに72例への移植が実施されました。これらはレトロスペクティブな解析により、その効果が検証されました。

その後、厚生労働科学研究委託費の支援のもと先進医療B(2014年7月 - 2017年9月)が実施され、次いで眼表面の癒着解除を目的として京都府立医科大学眼科学教室の外園千恵先生により重症ステムセル疲弊症を対象にした医師主導治験「難治性眼表面疾患患者における粘膜上皮供給を目的とした培養自家口腔粘膜上皮シート移植の多施設共同単群第3相試験」(2018年10月 - 2019年9月)が神戸医療産業都市推進機構(FBRI)による製造支援のもと実施されました。

弊社は、医師主導治験の成績に基づいて、角膜上皮幹細胞疲弊症の重度の患者さまを対象として新しい治療の選択肢を提供できるよう、 製造販売承認申請を厚労省に提出し、2022年1月20日付でサクラシーの承認を取得し、同年9月1日に保険適用となりました。
サクラは、当社ゆかりの地である青森県弘前市と開発の拠点である京都市に共通する象徴であり、患者さまの視力が改善し、サクラが観えるように祈りを込めてサクラシーと命名されました。

木下茂 先生

木下茂 先生

京都府立医科大学名誉教授
2015年より京都府立医科大学特任講座感覚器未来医療学教授
日本角膜学会名誉会員
日本角膜移植学会理事(2023年度)

1992年に京都府立医科大学眼科学 第10代教授に就任され、「臨床の府立」をモットーに最高の診療を追求して患者に提供するという考えのもとに、難治性眼疾患に対するトランスレーショナル研究を目指してこられた。
特に角膜再生医学の研究を進められ、1999年には培養角膜上皮シート移植の臨床試験を、2001年にはサクラシーの基礎となる自家培養口腔粘膜上皮シート作成に成功し、このシート移植術により角膜再生医療への新たな糸口を見出されている。

外園千恵 先生

外園千恵 先生

京都府立医科大学眼科学教授(2015年~)
日本眼科学会常務理事(2023年~2025年)
日本角膜学会理事(2023年~2025年)

教授就任以前から木下前教授と共に、難治性眼表面疾患に対する治療法の研究の中心として活躍されてきた。
培養自家口腔粘膜上皮細胞シート移植に関する臨床研究を進められている時期は、再生医療に関する法整備・制度設計の過渡期でもあったが、サクラシーを患者さまのもとに届けるため、精力的に開発に取り組まれてこられた。

治療スキーム

口腔粘膜上皮細胞シートの製造と移植
  • 患者さまより口腔粘膜組織を採取したします。(必要に応じて、事前の歯科治療など口腔環境を整えてください。採取当日には十分な消毒を実施ください)

  • 採取した組織を製造所に輸送し、羊膜基質上にて培養いたします。(約2週間)

  • 眼表面の癒着を解除し、サクラシーを移植します。(適宜、免疫抑制剤での術後管理をお願いします)

移植後の管理

必要に応じて以下を行ってください。

  • 治療用コンタクトレンズの装用

  • 原疾患が眼類天疱瘡以外の場合には、シクロスポリンとして1日量2~3mg/kgを術翌日から経口投与する。なお症状により適宜増減する。

  • 原疾患が眼類天疱瘡の場合には、シクロスポリンとして1日量2~3mg/kgを術翌日から経口投与及びシクロホスファミド(無水物換算)として50mg を1日1回、術翌日から経口投与する。なお、症状により適宜増減する。

臨床成績

2018年10月~2019年9月、国内第3相医師主導治験(課題名「難治性眼表面疾患患者における粘膜上皮供給を目的とした培養自家口腔粘膜上皮シート移植の多施設共同単群第3相試験」)が実施されました。

目的

重症のステムセル疲弊を伴う難治性眼表面疾患患者として、原疾患がスティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、熱・化学外傷であり、かつ眼表面に高度癒着※を伴う者を対象とし、口腔粘膜上皮細胞シートの粘膜上皮供給としての有効性及び安全性を検討する。

対象患者数

7例

試験方法

移植実施の3週間前に被験者の口腔粘膜組織を採取する。培養口腔粘膜上皮シートを作製、移植を実施後24週に評価を実施した。(移植後約2週間は入院により経過観察)

組入れ基準

角膜上皮移植では予後不良、又は羊膜移植のみでは予後が期待できない難治性眼表面疾患を有する者。具体的にはスティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、熱・化学外傷のいずれかに該当し、かつ眼表面に高度癒着※を伴う者。※高度癒着 癒着スコア≧4

癒着スコア

瞼球癒着及び結膜嚢癒着(上・下)のスコアの合計

癒着スコア

試験スケジュール

癒着スコア

試験結果

主要評価項目

移植後24週における移植前からの癒着スコアの変化量(中央評価)の平均値は、-2.6(95% CI:―4.5 ~ -0.7)であり、1標本t検定において統計学的有意差が認められました(p=0.017)。

主要評価項目

症例ごとの背景情報と癒着スコアの変化は下表の通りでした。
※本治験では全例で羊膜移植術が併用されました。

癒着スコア